ERP導入:技術的稼働とビジネス的稼働の理解

手前で歯車付きのデバイスを持っている手

ロバート・カントウ、ラシ・グプタ著

多くのライフサイエンス企業は、ビジネスの不可欠な要素を管理・統合するために、エンタープライズリソースプランニング(ERP)に依存しています。ERPソリューションの導入は、どの組織にとっても一大プロジェクトです。適切なERPを選択したとしても、導入にあたっては特定のビジネスニーズ、特に製薬・バイオテクノロジー業界のクライアントが置かれている規制環境を考慮しなければなりません。計画や調整が不十分な導入は、プロジェクト全体だけでなく、ビジネスそのものを危機にさらす可能性があります。

クライアントは通常、ERPソリューションの導入をインテグレーターに委託します。インテグレーターはソフトウェアや構成に関する深い知識を持っているかもしれませんが、バイオ医薬品企業に求められる機能についての業界特有の知識が不足しているケースが多く見受けられます。その結果、システムの技術的な構成や統合に重点が置かれがちです。その結果、導入後であってもクライアントがソフトウェアを適切に活用できず、その潜在能力を十分に引き出せない状況が生じています。当初想定していたビジネス上のメリットは限定的になるか、遅延することになります。最悪の場合、導入前に存在していた紙ベースやスプレッドシートによる管理が、依然として主要な業務プロセスツールとして残ってしまうのです。

ERP導入における「技術的」成功と「ビジネス的」成功

エンドユーザーがERPソリューションを導入し、適切に活用できるかどうかが、導入の成否を分けます。私たちはクライアントを支援する中で、ERP導入を成功させるために不可欠な2つの「本稼働(ゴーライブ)」の形があることを認識するに至りました。

技術的本稼働

技術的本稼働とは、ソフトウェアを適切に構成、テスト、統合するために必要な活動を指します。具体的には以下の通りです。

  • アーキテクチャ要件の特定と、システム設計および構成の定義
  • 新しいERPと既存システム間の連携の定義
  • エンドユーザーのセキュリティとデータ整合性の確保
  • レガシーデータのテスト環境への移行、およびその後の本番環境への移行
  • ユーザー受け入れテスト(UAT)を含む、システムバリデーションおよびシステム統合テストの実施

ビジネス的本稼働

ビジネス的本稼働とは、ビジネスユーザーがソリューションを理解し、業務を遂行して期待されるビジネス上のメリットを実現できるようにするための活動です。具体的には以下の取り組みが含まれます。

  • エンドユーザーがERPの機能を理解していることの確認(ソリューションでできること、できないことの両面)
  • ビジネス要件の特定とユーザー要求仕様書(URS)の作成
  • ERPを活用した新しい業務プロセスの運用方法の定義、およびそれらの新しい業務プロセスに対する標準作業手順書(SOP)の策定
  • 新しいプロセスを実行するために必要なデータが利用可能かつ十分であることの確認
  • 適切なエンドユーザーに対するタイムリーなユーザー教育の提供

現場から学ぶERP導入の教訓

あるクライアントの事例では、製造拠点およびサプライチェーン機能全体にわたる段階的なERP導入が進められていました。導入パートナーはソフトウェアの機能には精通していましたが、予算と時間の制約から、技術的な稼働開始に注力しすぎていました。その結果、各部門がサイロ化し、資材設定の断片化によって需要計画、供給計画、製造スケジューリングに支障をきたしました。さらに、導入前から業務プロセスが十分に定義されておらず、紙ベースのシステムにおけるプロセスの曖昧さがそのままERPに持ち込まれてしまいました。また、システムテストやユーザーテストに必要なマスターデータの一部は準備されていたものの、今後の業務遂行に必要なデータの多くがERPシステムに反映されていませんでした。その結果、技術的な稼働は成功したものの、必要なデータが揃うまでの数ヶ月間、システム上で実務が行われないという事態に陥り、全体として成功とは言い難い結果となりました。

対照的に、別のクライアントの事例では、商用ローンチに向けたERPの在庫管理モジュールの導入が行われました。このクライアントは紙ベースのシステムとプロセスが確立されており、業務ユーザーはシステムに求められる機能について十分な教育を受けていました。導入パートナーはライフサイエンス業界での経験がありませんでしたが、プロジェクトの初期段階から関連部門の業務ユーザーによるコアチームが編成されました。彼らはベンダー主導のセッションに参加してシステム設定の選択肢を学び、必要な機能について意見を提供しました。さらに、関連するすべてのマスターデータは稼働前にクレンジングと移行が完了していました。その結果、意図した通りにシステム上で業務プロセスを遂行でき、技術面と業務面の両方で稼働を成功させることができました。

ビジネス面での稼働を成功させるためにできること

ビジネス面での稼働を成功させるには、多くの要素が重要となります。 適切な導入パートナーを選ぶこと は、良い第一歩となります。 貴社の業界と、その業界特有の要件を理解しているベンダーを選定してください。

また、 経験豊富な社内外のリソースを巻き込む計画を立てることも有効です。 業界知識があれば、ビジネスニーズを理解し、優先順位を付けることが容易になります。

部門横断的なコアチームを編成する 影響を受けるすべての関連部門からメンバーを選出してください。このチームが、システムに求められる機能を特定する役割を担います。

さらに、 現実的なスケジュール を設定し、必要な活動を行うための十分な時間を確保するとともに、エンドユーザーがシステムの導入に向けて準備やトレーニングを行えるようにしてください。これらのステップをはじめとする多くの取り組みが、組織のERP導入を成功へと導きます。

重要なポイント

  • 認識しておくべきことは、 ERPの導入を成功させるには、技術的な稼働とビジネス上の稼働の両方を成功させる必要があります。技術的な側面にのみ注力しすぎると、ビジネス上のメリットを得るのが遅れたり、導入そのものが失敗に終わったりする可能性があります。
  • 多くのERP導入担当者はソフトウェアに関する豊富な専門知識を持っていますが、 ビジネス上の稼働を犠牲にして、技術的な稼働活動を過度に重視してしまうことがあります。時間や予算の制約から、導入担当者が技術的な稼働を主要な目標と見なしてしまうことは少なくありません。
  • 新興のライフサイエンス企業にとって、ビジネス上の稼働を成功させることは、それと同等(あるいはそれ以上)に重要です。 ERP導入において、ユーザーが意図した通りにシステム上で業務を遂行できるようにし、多大な資金とリソースの投資が真のビジネス価値を生み出すようにするためです。

ERP導入に関するご相談は、当社のチームまでご連絡ください。 info@convergeconsulting.com まで。

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